それでは、われわれの分野とは別の分野、例えば芸術の分野に目を移して、その芸術作品に何が隠されているのかを見ていこうと思います。芸術作品と言ってもその領域は非常に広く、音楽、小説、絵画などたくさんの分野があります。ここでは、それらのうち絵画に着目して、その絵画のなかにどのような本質が隠されているのかを分析(?)していくこととします。
図4を見てください。この絵は私がすばらしい画家だと思っているひと(塙 珠世(二科会会友))の作品です。題名は夢のパラダイス、です。右上には、かわいい白馬がほほ笑んでいて、これと対角的に恐ろしい黒ライオンが牙(きば)をむいて吼(ほ)えています。左側には船の帆(ほ)と帆柱があり、そして、帆綱が画面に広がっています。画面にはまた大きくきれいな水晶の珠(?)があり、さらに小さな珠がいくつも浮いています。そして遠景には異国の風景、パラダイスでしょうか、それが石段の向こうに連なって描かれています。さらになぜか、
白馬の頭の部分から左の中ほどの帆柱に向けて、帆綱を切断するかのように一本の弧(こ)を描く曲線が見てとれます。下のほうには片手をあげた人も見えます。
それでは、画家は、この夢のパラダイスという絵から観る者に対して、ナニを訴えたいために、ナニを隠しているのでしょうか。つまり、この絵(現実)の中に画家の思想や動機となっている心理の世界(本質)がどのように隠されているのかを、学生の皆さんとともにかんがえていこう、ということです。絵画を鑑賞して、それを批評すること、このことについては私は素人(しろうと)ですのでとてもできることではありません。そこで、学生の皆さんも私も、絵というものは、2次元の領域に描かれた形や色彩が視覚により自分の心に投影されたときに、自分のもつ心の状態と投影されたものとが共感(共振)する源泉(入力信号)である、と理由づけしてみるのです。ですから絵とは、心の座標と象限(心理空間、深層心理の時空世界)をわれわれの心の中に構成する作用をするもの、と考えるのです。このようにして絵を見ると学生の皆さんも私も、絵について何かを言えることになります。
図5は、このような見方から作ったものです。図5のχ座標は絵の帆柱のいちばん高いところから張られている帆綱です。そしてy座標は仔馬の頭の部分から左の中ほどの帆柱につながる曲線とします。つまり、このようにして作った、座標(χ、y)は上の考えによれば深層心理の空間ということになります。そうすれば4つの象限、(χ、y)(-χ、-y)(-χ、y)(χ、-y)、が現れてきます。
例えば、これらの象限に対応させて、愛(χ、y)、夢(-χ、-y)、やすらぎ(-χ、y)、苦悩(χ、-y)、というように見ることができます。こうしてこの絵の中から深層心理の時空世界が現れてきます。時空世界、時間と空間の世界と言うからには、時間はいったいどこにあるのか、ということも疑問としてでてきます。実は時間は座標(χ、y)に直角で学生の皆さんの目の方向に向いているz軸の中にあるのです。なぜなら、この絵の反射光(非常に多くの周波数をもった電磁波の反射波)が光速度cで皆さんの目に到達するまでの距離zという空間の中に含まれているのです(z=ct、t:時間)。
以上の分析から、夢のパラダイスという絵(現実)は、深層心理の時空世界(本質)が隠されている実体である、と言うことができます。もちろん、この実体とは画家自身の動機や思想、つまりモチーフ(motif)であることはすぐわかってもらえると思います(人の心)。このような分析を、画家が聞いたら怒るかも知れませんが、本当のモノは何か、ということを前提にモノを見ると、まったく新しいモノ(本質)がわかってくる、このことを学生の皆さんとともに勉強したかった、ということです。 |