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「宇宙からのメッセージ」(’96)
暗喩の世界に心象を描いて、現実の空間に具象化する事は極めて難事であるのに、塙はこれを当然であるかのように画布の上にいとも容易く表出して見せる。
内なる宇宙と外なる宇宙を、因果律を超越した循環する紅に彩り、背奥の眞理を神霊の使者である女神に託宣し、龍は神託の女神に畏敬して、塙の心象を荘厳する。
“宇宙からのメッセージ”(第81回二科展出品)は、塙の内なる感性の次元と外なる理想の次元とが共存する荘厳の詩歌である。
塙は何故か、日常空間を超越した、いやむしろそれから隔絶した次元に夢を馳せ、無辺の次元の存在を執拗なまでに追求する。輪廻や因果律の世界は対立の世界であると塙は言う。塙はこうした対立の世界は、変化の様相は見透せても心奥の描く夢を高翔させることはできない、と考えているに違いない。内なる宇宙と外なる宇宙とは、塙の心奥の感性と無限の要因かも知れぬ眞理であって、龍と女神はそれゆえ塙の画家としての視線が描く昇華した自身の影像でもある。執拗とも言える塙の無限の世界の追求は、この昇華した影像を絶対の存在に完結せんがための行為でもあると考えられなくもない。“宇宙からのメッセージ”はだから“塙からのメッセージ”なのである。
紅の輪環は塙の理性であり、理性の遼遠こそが無辺の眞理である。この遼遠からの使者は神託を携えた女神であり、純粋無垢の女神は龍に眞理の総体を伝言する。眞理の総体とは神託であり、この神託を伝え聞く龍は有形の姿から無形の姿に変容していく、と塙は言うのである。女神は紫の袖を差伸べて神託を受け入れる、紫は眞の美の象徴として究極の色として描かれている。描かれた女神はだから、塙自身の心奥の投影であり、昇華してゆくであろう自己の影像なのである。
こうした暗喩の世界は、塙の心象が描かせた心奥の神である。だから塙の神とは、単なる偶像崇拝的な神ではなく、無限の差異、無限の多様性、無限の愛、すなわち森羅万象悉くを、無限に創造しつづける存在こそが神のなのである。つまり塙の心象宇宙に内在する無限の愛と眞の魂こそ神なのだと言えよう。
宇宙から伝えくる魂、宇宙へ伝えゆく魂、塙にとってこれらいずれの魂も相寄る美しい塙自身の画家としての魂であって、それらが具象化された空間が“宇宙からのメッセージ”なのである。 |